・道新カルチャーplus 沼山良明の「されど音楽」vol.12



 日本のジャズが急速に進化した1970年頃から、北海道でも各地でジャズコンサートが開かれるようになった。主催するのは熱心なジャズファンたちで、「ネムロ・ホット・ジャズクラブ」に代表されるように、地域のジャズ喫茶などを拠点に、熱気に包まれていた。その要因の一つは、渡辺貞夫や日野皓正ら日本のミュージシャンが、アメリカジャズのコピーから脱却して、オリジナルな「日本のジャズ」を確立したこと。また山下洋輔らの先鋭的な「フリージャズ」が、世界の注目を浴びるようになったことなどと重なる。
 やがて83年に活動を始めたNMAも、国内外のミュージシャンを札幌に招聘すると同時に、負担が大きい航空運賃を分担する目的も兼ねて、道内各地に紹介するツアーを組み、僕自身何度も同行した。
 その音楽は先鋭的なので、誰もが初めて聴くことがほとんど。主催者やスタッフ、お客さんの反応が気になったが、多くの人々に未知の音楽と出会う喜びや衝撃、新鮮な感動を与えたようで嬉しい。また根室紋別などの打ち上げでは、豪快に山盛りにされた毛ガニや花咲ガニなど、北海道ならではの味覚がミュージシャンをもてなしてくれた。
 このようにNMAに共感して活動を支えてくれたのは、旭川西武スタジオ9や、旭川=志乃、根室=サテンドール、室蘭=ディディ、釧路=ジス・イズ、函館=バップ、新ひだか町三石=蓬莱音楽館、苫小牧=あみだ、などがある。ところが、旭川西武スタジオ9が92年頃に閉鎖したのをはじめ、過疎化やオーナーの高齢化などで、閉店を余儀なくされた拠点も多く活動は停滞気味。
 世代交代は時の流れ、次世代の新しい感性と熱意による新しいムーブメントに期待したい。

   (NMA音楽プロデューサー)