・サルガヴォ北海道ツアーを終えて


サルガヴォ北海道ツアーが終わって一週間がたった。仕事に復帰したクルマの移動中はほとんどと言っていいくらい、CD「ラ・クンパルシータ」を聴いている。もちろんお気に入りのCDだったことは言うまでもないが、ツアー4公演に同行したあとで聴きなおしてみると、それまで見えなかった部分がさらに鮮明に見えてきて、あらためてサルガヴォの凄さ素晴らしさを再認識している。



10月11日昼過ぎ、秋晴れの新千歳空港。いつものようにお寺からお借りした7人乗りのアルファードと、アミダさまの常連客が勤務するレンタカー会社から超!格安でお借りしたフィルダーの2台に分乗して、サルガヴォ北海道ツアーがスタートした。


Personnel :

鬼怒 無月 guitar  喜多 直毅 violin  佐藤 芳明 accordion

鳥越 啓介 contrabass  林 正樹 piano



10月11日:札幌:くう
10月12日:苫小牧:アミダさま
10月13日:釧路:THIS IS
10月14日:北見:JAZZFOOL



初日のくうは直前になって予約が急増しほぼ満員。数日前の心配がうそのように開場30分前から入り口の階段にお客さんが並び始め、のんびりとやってきた常連客が驚く始末。遠方からは東京から4人、室蘭、旭川、北見などからの遠征組も。曲間のMCのたびにドアをあけて空気を入れ換えるほどの熱気に包まれた。サルガヴォの演奏は3rdアルバムのタイトル曲で佐藤芳明のアレンジによる「ラ・クンパルシータ」から始まった。タンゴの古典曲を独自の解釈と解体的アレンジで聴いた瞬間から、CDでは知ることのできなかったサルガヴォの凄さを感じさせられた。

2曲目からはこれまでの3枚のアルバムに収録されている曲に新曲を加えたプログラム。ほとんどがメンバー各自の作曲アレンジによる楽曲で、9拍子や6/8拍子など多彩な複合リズムを駆使した超絶テクニックのスピード感と爽快さ、哀愁漂う繊細なメロディーやユーモラスな世界などなど。タンゴを基調にしてはいるがその範疇にとどまらず、アグレッシブなジャズやロック、東欧風や現代音楽やクラシック的など、あらゆるテイストをひとつの曲の中に組曲のように包含し、変化に富んだ絶妙な構成と展開による楽曲はどれも素晴らしい。

ノイジーかつ洗練された鬼怒無月のエレクトリック&アコースティックギター、美しく時に激しく情熱的なソロを奏でる喜多直毅のヴァイオリンと佐藤芳明のアコーディオン、複雑なリズムパターンで終始サポートする林正樹のピアノと鳥越啓介のコントラバスも、ソロパートではここぞとばかり存在感を存分に発揮する・・・。

メンバー5人の作曲とアレンジのセンスの良さと演奏力の高さには気品さえ感じられ、初めて体験するサルガヴォの世界に魅了された聴衆の二度のアンコールに応じて初日は終わった。CDが36枚も売れたことは驚異的でいかに素晴らしいライブだったかを示していた。


二日目、ギャグで有名な名物マスター・ツルさんの苫小牧アミダさま。サウンドチェック&リハーサルが始まると「いいね!」「やっぱサルガヴォすごいね!」と僕の目を見つめて嬉しそうに言ったのが印象的だった。リハでは新曲の練習と昨日演奏した曲をみんなで意見を出し合いながらリメイクしその日の演奏に反映させている。この日も東京から昨日の遠征組の内の2人と新たに1人が加わり、室蘭、札幌からもファンが来てくれた。本番ではツルさんのブラック混じりのギャグ(ツルさん特有の賞賛をこめた表現)が炸裂しすぎた感が・・・。常連客はそれも想定済みで楽しんではいたが、初めてアミダさまを訪れたお客さんにとっては違和感を、またサルガヴォの音楽がシリアスなだけに演奏者の一部には集中力の妨げになったようでもあり残念に思う。


三日目、鮮やかに彩られた紅葉真っ盛りの日高山脈を横断する道東道をひた走り4時釧路に到着。ジス・イズの店内に掲げられている故大野一雄さんらの写真パネルが、日本でも有数の老舗ジャズ喫茶の歴史を物語っており、サルガヴォがここで演奏できる喜びをみな感じていた。オーナーの小林東さんは、釧路芸術館の学芸員・福地さんが持ってきたCD「ラ・クンパルシータ」に一目(耳)惚れ。「ぜひ店でやりたい!」という意気込みに狭い店内でやることになった。満席には満たない集客ではあったが数人はカウンターでサルガヴォの快演に大満足。打ち上げと泊まりは、ライブにも来てくださったジス・イズを支援する郊外の阿寒町のご夫婦宅。とっておきの料理と真心で迎えていただいた。心から感謝!!


翌日早朝はご夫婦が栽培する野菜畑などを散策し、朝の陽光を浴びてから朝食。ご夫婦と別れを告げ阿寒横断道路でペンケパンケトーをながめて各自○○タイム(笑)。北見手前の津別町で林さんがライブで訪れたことがあるライブレストラン「セッション」でランチ。北見に着いたのは3時ころ。


四日目、北見の会場はホテルの建物の一階の一角にあるライブハウス JAZZ FOOL。ホテルのオーナー紺野さんが年に数回のライブのために作ったスペースで、40席が数日前にソールドアウト。最前列には東京から2人と札幌から2人(ひとりは4公演すべて廻った)の遠征組らが座りステージとの境界線はゼロという至近距離に「北見に来てよかった!」と感激していた。



即興演奏のライブが多いNMAの企画だが、バンドとしてこれほどまでにあらゆる要素を包含しながら完成度の高いグループは稀だと思う。またツアー中の毎日、2時間ほどのリハーサルで綿密な打ち合わせと練習を繰り返していたが、その真摯な姿勢から進化し続けるサルガヴォの可能性はこれからも期待したい。「同じライブは二度やらない」と公言しているNMAの企画ではあるが、鬼怒さんと女満別空港に向かう車中で「サルガヴォ北海道ツアー、もう一度やりましょう!」と約束し見送った。その時には今回見逃した人たちにもぜひ聴いてもらいたいと思う。


サルガヴォのみなさんと各公演にご来場いただいたお客さん、

各地でお世話になったみなさんに心から感謝します。



NMA 沼山良明