・進化する「アンサンブルズ2010 〜共振〜 」展


水戸芸術館で「大友良英アンサンブルズ2010 〜共振〜」展(11/30〜1/16)の最終章を見届けてきた。
昨年11月上旬、会期前の連携ライブ「大友良英 INVISIBLE SONGS」ライブ(日記11/15)で訪れて今回が2度目。黄門さまにも再会を果たす。


15日(土)
午前の便で羽田へ。上野15:00発「スーパーひたち」に乗る。
折しもその夜は日本のジャズファンに熱い思い出をたくさん残してくれた古澤良治郎さんのお通夜だった。出発前に弔電だけは打ってきたけど、「スーパーひたち」に乗ってもしばらくは後ろ髪引かれる思いだった。
妻と二人で楽しみにしていた水戸行きだったので・・・
そんな思いに関係なく特急電車はノンストップで4時過ぎ水戸に着く。


ホテルにチェックインをすませタクシーで水戸芸に降りると正面の噴水広場へ。
噴水の池には、台に乗った古いラジオなどが点在している。
日没の4時45分ころからこの作品を作った矢口克信と大友良英の「長靴即興演奏会」が開かれるのだ。



寒さも増してあたりがだんだん暗くなり噴水がライトに浮かび上がり始めた頃、どこからかかすかな音が聞こえはじめ胴着き長靴をはいた二人が登場。水音までも音として凍てつく池の中でのパフォーマンスがはじまった。
ギターやゴングなどが池をぷかぷか浮遊し二人の水しぶきが音と共に飛び散る。
一時間余り寒さをこらえて二人の一挙手一動に目と耳を凝らす。
子供連れの親子など観るほうも寒かったがパフォーマーはもっとたいへんだったろうと敬意を表してしまう。


夜は数人で雪が舞いはじめた繁華街に、水戸の冬は寒い!!
とびっくりしながら海鮮料理の店で食事。
年末に釜山ビエンナーレの仕事から帰国したばかりという著名キュレーターのAさんとも久しぶりに再会し刺激的ですごく楽しかった。
ホテルに帰ったのは午前2時半、すでに街はうっすらと雪化粧・・・




16日(日)
きのうはギャラリーの展示は見れなかったので、
朝から水戸芸に行きついに「アンサンブルズ」展を見る。
昨夜の噴水はラジオたちが雪をかぶり、池には氷が張っていた。
が、その静かな佇まいにも雰囲気があって温かささえ感じてしまった。
館内のギャラリーは撮影禁止で写真に残せなかったのがとても残念・・・



会場は第1室から5室までが直線上にあり、
内、2室と4室が吹き抜けになって天窓からあかりが射し込んでいる。
そして通路のような6室、隔離されたように7室がある。

ギャラリーの第1室に一歩足を踏み入れると、これまで見てきた百台以上のポータブルレコードプレーヤーをメインにしたアンサンブルズ展と光景が異なる。
ポータブルプレーヤーと同じくらいの数のスネヤーが、小さなワイヤーブラシで優しく擦られたり小さな棒のようなもので時に痙攣のようにランダムに可愛い音を発している。部屋の奥の方のグランドピアノは時々弦を擦ったり共鳴音を生む仕掛けから繊細な音を発している。
3室の無残に解体されたアップライトピアノには高い天窓近くまで張られた数本の共鳴弦がライトに美しく映えフィードバック音などの仕掛けが。
5室のもう一台のピアノは我がヤマハディスクラビアと呼ばれる自動演奏付きを使った作品。
その他バスドラや和太鼓のようなものまでが配置されていたり、無数のCDプレーヤーとイヤホンが天井を埋め尽くした部屋。
通路状の6室は懐かしいオープンリールのテープレコーダ3台をテープがゆっくりと揺れながら走っている。GOK SOUND の近藤さんの作品で「テープが隣のデッキに到達するのに2分かかるので、同じ音が聴けるのは2分後になる」と説明してくれた。
さらにちょっと離れた第7室はオブジェと化したおびただしいレコードや、無造作に垂れ下がったテープをなびかせるカセットテープなどが壁面を埋め尽くし、ケーブル類、ラジオ、ギターなどが通路を遮るように散乱し、昔大友氏が愛用していたまな板のギターも懐かしい破壊的な音を時折響かせ、GRAUND-ZERO 時代をふと思い出す異質で緊張感のある空間。

これらの楽器群の一台一台異なる発音やスィッチのオン、オフなどが絶妙にコンピューターにプログラミング(作曲?)され、1〜7室までの音が遠くに近くに、また移動することによっても変化しながら、眠りから覚めた楽器たちが奏でるまさにアンサンブルのように聴こえる音と視覚の空間を創出している。



午後6時、約1ヶ月半の展示が終わった。


7時からいよいよこの楽器群と、
大友良英Sachiko M石川高吉田アミ、堀尾寛太による
「クロージングライブ」が始まる。
開場を待つロビーには長蛇の列。
雪の中東京からの客がかなりを占めると思われるが 250〜300人くらい?


開場するとギャラリーの思い思いに席を取る、
が、大友良英のギターの音がきこえると音のする方向へ大移動が始まる。
やがて、吉田アミのかすかだが体の芯から絞り出すようなヴォイスがどこかから・・・彼女は3室のやや暗い壁面に寄り添うように立っていてやがて2室の通路に近い所に移動する。
その壁の裏側からきこえる石川高の笙の音色は、アミのヴォイスと共振しあって微妙な波動を生んだり交わったりで鳥肌。
Sachiko・Mはどこ????あの7室だ!と気がついて行ってみるとその空間を独占していて存在感に満ちたパフォーマンスを聴かせていてすでに聴衆で埋まっている!
堀尾寛太は廃品のような機材を載せたワゴンを押してギャラリーをあちこち移動しながら、クルマのスプリングのような形をしたネオンのように発光するカラフルな器具や裸電球などを使って持ち味を発揮しユーモラスに目を奪う。
さすが御大・大友良英には常に大勢の聴衆がついて移動しそれを分散させようとしているかのように場所を変えていたので、じっくり見ることができなかった。


一時間あまりのライブパフォーマンスは、展示された音と5人のパフォーマンスが聴衆をも巻き込み共存し、そしてパフォーマーも聴衆も一人一人がそれぞれ異なる音を求め体感していた。音を見る?音の展覧会?
この感覚は僕の言葉ではとうてい言い表せないが、
発売されたばかりの「Sound&Recording」誌2月号の特集はお薦め!


展示された音たち、演奏者や製作に関わった方々、聴衆、そして水戸芸術館特に企画者の竹久さんとMeToo-推進室のみなさんの偉業に感銘!
人々の "共振" によってはぐくまれてきた「大友良英」と「アンサンブルズ」がさらにさらに進化することを信じたい。

大友くんと演奏者の皆さん、暖かく迎えてくださった水戸芸術館の竹久さんやMeToo- 推進室の皆さんに感謝!! 
大打ち上げ(70〜80人くらい?)に同席し感動を共有したみなさんに感謝!!
そして諦めかけていたこの旅のチケットを、貯めていたJALマイレージで誕生日(1/30)プレゼントにしてくれた最愛の妻に感謝!!



1984年11月、故高柳昌行さんのソロツアーに同行した大友くんと出会って27年あまり、札幌初ライブは1990年。ちょっと大袈裟にいえば彼の進化する姿と音楽に刺激を受け続けることで若さをもらって生きてきたとも言えるが、これからも彼の進化が続くかぎり見とどけていこうと改めて思う楽しい水戸の旅だった。同時に人口26万人の水戸で実現できるのに人口190万人のこの札幌で実現が難しい現状と自分に、はがゆさとやる気が交錯した思いも募る旅だった。


旅の写真をミクシィフォトアルバムにしました。
http://photo.mixi.jp/view_album.pl?album_id=500000009467312&owner_id=3319652

MeToo-推進室のサイトに写真が掲載されています。
http://www.artmetoo.jp/ensembles/index.html#anchor05

水戸芸術館
http://www.arttowermito.or.jp/

●Sound&Recording誌2月号巻頭特集5ページにわたって
「アンサンブルズ」展が写真付きで掲載されています(¥980)必読!!