・道新カルチャーplus 沼山良明の「されど音楽」vol.3



 2011年3月11日の東日本大震災で、福島は津波被害に加えて原発事故による放射能汚染という不条理な未曾有の事態に見舞われた。
 その年の8月、大友良英遠藤ミチロウら福島ゆかりの音楽家と詩人を代表に、「フクシマ」をポジティブな言葉に変えて世界に発信しようと、まだ放射線量の高い福島市郊外の四季の里公園で「フェスティバルFUKUSHIMA!」が開かれた。芝生には放射性物質の飛散を防ぐため、全国から集まった風呂敷や布きれを縫い合わせた「大風呂敷」を敷きつめて。
 フェスティバルは以後形を変えつつも毎年8月に開かれており、翌12年僕はそれを見に福島へ行った。音楽家ジョン・ケージ生誕100年を記念したイベントが行われている東京サントリーホールと映像で結んでの公演。
 四季の里公園では、日没にかけて無数の光るオブジェが灯り、光を放つ連凧が上空に舞う中、楽器や鳴り物を持参した200名を超える「オーケストラFUKUSHIMA!」による、大友良英作曲「マッシュルーム・レクイエム」の演奏が行われた。指揮は大友良英と応援に駆けつけた坂本龍一のほか、次々に入れ替わって誰もが指揮者になれる。そこから生まれる音楽は荘厳であり、ジョン・ケージへのオマージュであり、震災で犠牲になった人々にも捧げられているようで感動した。
 昼間はレンタカーで、津波で跡形も無くなった南相馬市沿岸部や、放射能で汚染され無人化した飯舘村を回ると、その惨状に妻が涙ぐむほどだった。
 昨年秋に再び訪れると、南相馬ではまちづくりのためのかさ上げ工事に目を見張り、飯舘村では除染された汚染土の黒い袋が山積みされている光景に心が痛んだ。震災から4年、東北や福島のことを風化させてはならない。

(NMA音楽プロデューサー)