・道新カルチャーplus 沼山良明の「されど音楽」vol.5




 僕が主宰するNMAの活動は、その時代の世界の新しい音楽を札幌で紹介したいという衝動で、1983年からコンサートを企画開催し、道内各地でも開催している。
 紹介しているのは、即興音楽、ニュージャズ、現代音楽、電子音楽、ノイズミュージックなど、あらゆるジャンルの要素を含みながら、カテゴリーでくくることのできない国内外のミュージシャンたちで、その多くが即興性にあふれた音楽である。それらはまだ一般に認知される前の音楽なので、集客が難しく赤字になることが多く、その赤字を本業のピアノ調律で穴埋めしてきたが、カッコ良く言えば大好きな音楽への恩返しかも知れない。
 その中には、90年頃からギター&ターンテーブル奏者として世界で活躍し、NHKの朝ドラ「あまちゃん」の音楽で有名になった大友良英がいる。また、80年代にパリから帰国した即興ピアニスト加古隆とは、数回北海道ツアーを共にし、後にNHKスペシャル「映像の世紀」の作曲家として知られるようになった。その他にも出会った素晴らしい音楽家は数え切れなく、僕の人生において何にも代えがたい貴重な財産となっている。
 個性を存分に発揮し合いかつ協調しながら創造する「即興音楽」、それは各々が互いの存在を認め合う共同作業であり、私たちの社会生活の原点が反映凝縮されていると思う。
 めまぐるしく発展した物質文化と共存できずに置き去られた「心」、そのアンバランスから生じるさまざまな矛盾や歪が噴出している現実の中で、安らぎや娯楽だけでなく、自己啓発を喚起させられるような能動的な関わり方と楽しみ方も、音楽の大きな魅力だと信じて活動を続けたい。
   (NMA音楽プロデューサー)