・道新カルチャーplus 沼山良明の「されど音楽」vol.7



 道南福島町の福島大神宮境内土俵を舞台に、今年で20回目となる「かがり火コンサート」が開かれる。
 ことの始まりは今から20年前、NMAライブの常連で札幌の染色家長谷川雅志さんから突然電話があり、「いま福島大神宮にいる。社殿で布の個展をやることになったけど、お客さんは来るはずもないので、常磐井宮司さんと相談し面白いライブをやろう!ということになったので、企画をやってほしい」という。彼は大の祭り好きで、毎年檜山管内江差町の姥神大神宮の祭りに御輿を担ぎに行っており、宮司さんと意気投合したという。もちろん面白そうなので即答、他の町では見られないようなクリエイティブで個性的なミュージシャンを、東京などから迎え、札幌から福島町に通っている。
 コンサートは町の有志による実行委員会の手作りで、3回目からは新しくなった土俵を舞台にしている。樹齢500年を超える樹木が生い茂る境内への坂道にはろうそくが灯り、ステージの両脇に焚いたかがり火のはぜる音とセミの声。そこに毎年3カ月余かけて制作する長谷川さんの布のインスタレーションが背景を彩り、絶妙な雰囲気を醸し出す。
 宮司さんは神楽の名手なので、前座で松前神楽を披露するよう勧め、2000年から奏上することになった。すると翌年から中高生らが志願して一気に若返り、08年に急逝した宮司さんを継いだご子息の新宮司を中心に、はつらつとした舞を披露している。
 また07年からは、前年のコンサートを見てハマッてしまった、友人で著名なデザイナー市川義一さんが、毎回フライヤーを一手に引き受けてくれる嬉しいハプニングもあった。
 今年は7月4日、伝説的な前衛バンド「ヒカシュー」が出演する。

(NMA音楽プロデューサー)